浮気をされた方の相談に乗ると、「報復したい」という言葉をよく聞きます。「報復」という言葉はとても恐ろしげな印象がありますが、今までの愛情が裏切られたわけであり、その気持ちはよくわかります。
そのため、私は「報復・復讐したいなどと言ってはいけない」というような言い方はしないようにしています。言いたくもなって当然だからです。
本日は「浮気の報復」について、探偵としてどう考えるかをお話したいと思います。
「浮気の報復」は「自分も浮気をすること」ではない
では、冒頭のお話に戻りましょう。
私は「報復をしたい」と考える相談者に、「では、どんな形で報復したいですか?」と聞くようにしています。中にはとても具体的な「報復案」とも言うべきプランを話してくれる方もいますが、ごく少数です。殆どの方は「よくわからないけれど、同じ気持ちを味わわせたい」というようなことを言います。
あなたはどうでしょうか?
もし夫・妻が浮気をしたら、悲しさだけでなく、悔しさや報復心が出て当然かと思います。
「目には目を」ということで考えられるのは、自分自身も誰かと浮気をするということです。しかし、それで「同じ気持ちを味わわせる」というのは非常に難しいことです。なぜならば、浮気をしている人の気持ちは一瞬であってもあなたから離れてしまっているのであり、その時点で気持ちのスタートラインが同じではないからです。
仮に、「夫・妻が浮気をしたのであれば、自分も」と浮気行為に及んだとします。その浮気がばれたとき、万が一夫・妻が「自分の浮気はいいが配偶者の浮気は許さない」というタイプであれば、さらにやっかいなことになります。自分のことを棚上げし、慰謝料や親権を要求してくるかもしれません。
そうなれば、事実浮気をしてしまっているあなたに勝ち目はないのです。先に浮気をした夫・妻の浮気証拠は既にしっかり隠されてしまっているでしょう。浮気を浮気で報復してしまえば、あなたは相手の土俵に乗ってしまったことにしかならないのです。
正当な方法で離婚することが最も効果的な報復
私は、正当な方法で離婚することが最も効果のある報復であると考え、依頼者にきちんとご説明するようにしています。
「浮気相手と夫が幸せになるのが許せない」「会社での夫の地位を失わせたい」ということを言う方もいますが、もしそんなことができたとしても依頼者自身が幸せになるわけではないのです。もし、依頼者が不法に配偶者の名誉を傷つけるようなことをしたり、暴力などの迷惑行為を行えば、依頼者は自分自身の幸せな人生を失ってしまうことになります。
正当な方法で離婚すること、しかも、依頼者に有利な形での離婚を成立させることで、浮気をした配偶者は失ったものがどれほど大きかったのかを思い知ります。浮気の恋愛関係が浮気だったからこそのものだったということもわかるでしょう。
依頼者が浮気をした配偶者なしで新しい人生を歩み始めることこそが、配偶者にとって最も大きなダメージとなるのです。
探偵は浮気の報復を手伝うものではない
結果として、探偵は浮気の報復をお手伝いする職業ではないということになります。探偵にとって最も大切なのは、依頼者が新しい人生を歩みだすこと、つまり、依頼者がより満足して離婚し、大きな問題から抜け出すことだからです。
依頼者が離婚した後、元夫・元妻がどんな生活をするかというのは、依頼者にとって重要なことではありません。「依頼者にとってよい夫・妻ではなかった」という事実がすべてです。さらに、ご自身は配偶者にとってよい夫であったか、よい妻であったかということも考えてみれば、選ぶべき道も見えてくるのではないかと思います。
まずは冷静になること、ご自身と、ご自身が大切にしたい家族について考えていただければと思います。
なお、探偵業の中には「別れさせ屋」を自称する事務所もあります。多くは違法となる詐欺行為であり、依頼者の報復したいという気持ちに付け込んだ悪徳業者であると考えられます。
以前ほどその名称を聞くこともなくなりましたが、インターネットで検索すれば、未だ別れさせ屋を引き受けるといったことが書いてあるサイトが多く存在しています。安易にそのような違法業者を信じることがないよう、慎重に判断するようにしてください。