この記事は、「3年以上同棲した彼氏が浮気をした」ということでお困りの女性の方に読んでいただきたいと思います。
インターネット上の相談掲示板などを見ると、このような悩み相談に対する答えの中に「3年同棲していれば、『婚約者』あるいは『内縁の妻』と同等の扱いになるため、慰謝料を請求できる」というものが多くみられます。果たしてその通りなのでしょうか?付き合いの年数で男女の付き合いが規定される場合はあるのでしょうか?
詳しくご説明したいと思います。
ただ同棲しているだけでは一般的な「恋人」と同じ
結論から申し上げますと、たとえ3年間以上男女が同棲をしても、そのことによりすぐに女性が「婚約者」あるいは「内縁の妻」扱いとなるわけではありません。
3年も一緒に暮らしていれば、婚約者や内縁の妻と同等の地位があったとみなされる例も多いのですが、実情どうであったかの確認はその恋人同士それぞれで異なります。結婚の具体的な話もなく、それぞれの両親との関わりも一切なかったとなれば、同棲していても一般的な「恋人同士」と変わりありません。
婚約者の定義とは?
日本には結婚についての法律はありますが、婚約についての法律はありません。婚約したからといってどこかに届け出るということはないので、男女間の認識がずれてしまう場合があります。結納を済ませている、結婚式場を予約している・・・ということであれば相互に結婚の意思があったことは明白ですが、そこに至る前の段階でも「婚約中」であることは間違いないわけです。
判例からかんがみて、次のような場合は「将来、結婚する意志があると認められる」ものと考えられます。
・結婚するという意思を両親や兄弟姉妹、友人など、第三者に伝えている。
・ふたりの意思によって同居(同棲)している。
・性関係があり、継続している。
なお、これは成人している場合に限ります。それぞれ単独に考慮されるのではなく、すべての要因を総合的に配慮して状況認識されるものと考えましょう。
上記のような状態であれば、たとえ口約束のみ(書面などに書かれたものがない)婚約であっても、婚約中と判断される可能性が高いです。逆に、口約束をしていても上記のようなことが伴っていない場合は同棲期間が長くても婚約者として認められないケースが多いと考えましょう。
内縁の妻の定義とは?
「内縁の妻」とは、結婚(入籍)こそしていないのもの、ほとんど結婚したのと変わらない状況で生活している「内縁関係」の女性のことです。「準婚関係」「事実婚」と呼ばれることもあります。夫婦別姓のために強いてこの関係を選ぶ場合もありますが、基本的には「将来的に結婚する意志がある」ことが前提です。
内縁関係であるふたりの生活は結婚と変わらないものと判断されているので、「既婚者と浮気をしている女性へのメッセージ/前編」にてご説明した夫婦の義務「同居の義務/協力義務/扶助義務/貞操義務」が発生します。社会的にも夫婦として認められます。
この時点で男性が浮気をすれば、「夫の浮気」とほぼ同義であり、内縁関係の解消や慰謝料請求の対象となります。
慰謝料を請求する場合
さて、では慰謝料について考えてみましょう。内縁関係となると、社会的な認識も手伝い、「内縁の妻」というご自身の立場はずいぶんはっきりとわかるものです。浮気を証明する証拠は一般的な夫婦と同じく必要になりますが、浮気を理由に慰謝料を請求する根拠はあります。
しかし、はっきりと結納などを済ませていない状態での同棲となると、彼に結婚の意思はあったのか?自分たちはどういった認識で同居していたのか?ということがあいまいで、自分の立場も、彼に対してどのように対応すべきかも考えにくくなってしまうかもしれません。
慰謝料を請求するとなると、まずこの「同居の意味」を明確にする必要があります。気持ちも落ち着かない中、これらをご自身だけで進めていくのは非常に大変なことです。彼本人、および両親への確認なども必要になるので、私としては弁護士事務所や行政書士事務所など、第三者を入れて調査し、請求・示談することをおすすめします。
金額は50万円から200万円が相場であると言われていますが、50万円以下の請求がかなり多いのも事実です。慎重に示談を進める必要があります。
とはいえ、精神的なダメージを金額で推し量ることはできません。「金額はどうあれ新たな一歩を進むために慰謝料が必要である」と考えるのも、前を向くひとつの方法かと思います。